メタルバンドと並んで腕時計に利用されるバンドといえば、革バンドです。
この記事では一般に腕時計で使用されている牛革の特徴と種類をご紹介します。
革バンドのメリット・デメリット
革バンドの特徴
・高級感、美しさ、感触の良さ
→肌に触れた時に心地良い装着感が得られる
・吸湿性と放湿性
→繊維の微細な隙間が適度に湿度を吸い取り、付け心地が良い
→メタルバンドに比べて、温かみがある
・弾力や伸縮性がある
→繰り返し使用することで腕の形にフィットする
・水に弱い
→水に濡れると色落ちや色合いの変化が生じる
・色落ちがしやすい
→色の変化や色落ちがしやすい
・カビが発生しやすい
→微細な隙間に入り込んだ湿気が抜けきらないとカビが発生する。
→さらに、一度カビが発生すると完全に取り除くことは困難
使用していて感じる革バンドのメリット
管理人が革バンドに感じる一番の魅力は、革という素材が持つ質感です。
革バンドは金属バンドで表現しにくい、上品さや気品を漂わせることができます。
それを強く感じたのが、SEIKO5をメタルバンドから革バンドに交換した時でした。
1万円前後の腕時計から華奢さやチープ感が一変し、落ち着いた大人の腕時計に変化したのです。
腕時計の印象を大きく変えることができるのが革バンドの特徴の1つです。
また、革バンドは弾力と伸縮性があり、何度も使用することで、自分の手首にどんどんフィットしてきます。
使用していくうちに、自分の腕に馴染んでいくのは毎日使用する道具ならではの楽しみです。
使用して感じる革バンドのデメリット
革バンドは水分とカビが大敵です。
放湿性に優れているとはいえ、汗を書きやすい春から夏は毎日使用するのは避けています。
革バンドにカビが発生すると酷い異臭がしますし、汗臭さも気になります。
革バンドの腕時計は連続して使用するのは避けて、使用していない時は日陰で乾かすなど日常の配慮がメタルバンドよりも必要です。
管理人は春〜秋の初めはメタルバンド、冬場は革バンドの腕時計と使い分けています。
牛革の種類
腕時計に使用される革はその多くが「牛革」です。
牛革は牛の成長過程によって呼び方と特徴が異なります。
1.カーフスキン(仔牛皮)
生後6ヶ月以内の仔牛の皮
傷が少なくきめ細かいので滑らかで美しい銀面になる
需品な質感を出せる 高価
2.キップスキン(中牛皮)
生後 6ヶ月から1年くらいまでの牛の皮
カーフに近いきめ細かい銀面 繊維の密度も高いので比較的丈夫
ヨーロッパではカーフと一緒に分類されることもある
3.その他の牛革の種類
カーフやキップが腕時計ではよく使用されますが、その他にも魅力的な牛革はあります。
箇条書きでご紹介します!
ステアハイド(去勢牛)
3~6ヶ月で去勢 生後2年以上が経過した雄の成牛の皮
食肉用の牛の原皮 流通量が多い
ブルハイド(雄牛)
去勢されずに生後2年以上が経過した雄の成牛の皮
粗く固い繊維で丈夫 銀面は粗く傷も多い
鞄の底やワークブーツに使われる
カウハイド(雌牛)
生後2年以上のメスの成牛の皮
ステアより薄く、銀面の木目も比較的細かい
ハラコ(腹子)
牛の胎児の皮 死産や流産した死後の胎児を使用
流通量が少なく、希少
皮としての強度は低く、装飾用
バッファロー(水牛)
通常の牛革より厚手で丈夫、繊維は粗い
野性的な独特なシボが特徴
革バンドの鞣し(なめし)の種類
動物の皮は、柔軟性に富み非常に丈夫ですがそのまま使用するとすぐに腐敗したり、乾燥すると板のように硬くなり柔軟性がなくなります。この大きな欠点を樹液や種々の薬品を使ってこの欠点を取り除く方法が「鞣し」と言います。鞣していない状態を「皮」と呼び、鞣したものを「革」と呼び区別しています。
参考:一般社団法人 日本タンナーズ教会
鞣しは皮の腐敗や乾燥を防ぐ処理で、これで「皮」は「革」に生まれ変わる大事な工程の1つなんです。
鞣しに大きく分けて2つの方法があります。
植物性の成分を使用する「タンニン鞣し」と金属化合物を使用する「クロム鞣し」です。
腕時計のバンドに使用される革は内側はクロム鞣し、外側はタンニン鞣しと使い分けわけられている事もあります。
クロム鞣しの場合は、金属アレルギーの原因物質であるクロムが入っている為、金属アレルギーの方や肌が弱い方は要注意です。
鞣しの種類まで記載されている革バンドの製品は少ないですが、蘊蓄の1つと覚えてもらえれば幸いです。
タンニン鞣しの特徴(植物性の成分)
1.ハリとコシがある
→◯タンニン(渋)の収斂(しゅうれん)作用で繊維が引き締まって丈夫な皮になる
2.経年変化がある
→◯使うほどに雰囲気が増す
3.可塑性がある
→△傷が残りやすい
4.水分を吸収しやすい
→△汚れやすい、水分で変質しやすい
5.高価
→△鞣しに時間と手間がかかる為、原価が比較的高い
クロム鞣し(クロム化合物を使用)
1.しなやかで軽く伸縮性がある
→◯身に着ける製品むき
2.弾性と耐熱性
→◯傷や変形に強い 耐久性が高い
3.安価
→◯短時間で大量生産が可能 生産性が高い
4.発色が良い
→◯色や柄が鮮やかに表現できる
5.金属物質が含まれる
→△金属アレルギーの人、肌が弱い人は注意
革バンドのお手入れと注意点
革バンドを使用する上で注意することは以下の3点です。
・汗や雨が付着した場合は乾いた布で拭き取る
・使用後は湿度の低い暗所で保管する
・複数の腕時計でローテーションできるとベター
汗や雨が付着した場合は乾いた布で拭き取る
使用後は乾いた布でバンドを拭くことを習慣にしておきます。
特に、革バンドに水気は大敵で、カビや異臭の原因になります。
メガネ用のクリーニングクロスが繊維が柔らかいのでオススメです。
使用後は湿度の低い暗所で保管する
革製品ですので、直射日光はひび割れ等の乾燥が原因の消耗につながります。
また、洗面所の近くなど水回りに保管すると、知らないうちに飛沫がかかって跡になってしまうので注意です。
長期間使用しないのであれば。乾燥剤や防カビ剤と一緒に保管しておくのがオススメです。
複数の腕時計でローテーションできるとベター
適切に使用していても、革にはダメージが蓄積されていきます。
革バンドを長く使用するには複数本で休ませながら使用するのがおすすめです。
お気に入りの腕時計を毎日つけたいくなるのはとてもよくわかりますが、2~3本の腕時計をローテーションさせて気分も変えましょう。
まとめ:魅惑の革バンドの世界
腕時計に使用される革バンドは牛革の他にも、クロコダイル(ワニ)やトカゲがあります。
それらも紹介できれば…と思ったのですが、文章量的に多くなりすぎます。
管理人は革製品も好きなので、どうしても熱が入ってしまいました。
メタルバンドの気軽さや実用面の有効性も十分わかっているのですが、革バンドの魅力も捨てがたいのです。
今持っているメタルバンドの腕時計を革バンドに変えるだけで雰囲気もガラリと変わりるので、新しい腕時計を買おうか検討している方は、バンドの取り替えも試してみてください!!
おまけ 参考資料
レザークラフトに役立つ 革の事典
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